脳の活性化に?写経しています。

お寺の専用の用紙に写経します。
お寺の専用の用紙に写経します。

宝山寺で写経すると、体の中から清められたような気持ちになります。
 写経する際はお手本を渡されます。それを薄紙に下敷きにして、丁寧に丁寧に、なぞるように綴ってゆきます。般若心経は全部で262文字、唱えれば3分とかからないほど短いお経ですが、写経するとなると最初は1時間半はかかります。慣れてくると速く書き写せるようになりますが、それでも30分ほどはかかるでしょう。

 お手本を下敷きにして書き写したものを見ると、自分の字ではないことに気付きます。つまり自分の字でないということは、普段の「私自身」ではない。このことが最も大切なのです。
 慣れてきた人中には、般若心経は丸暗記しているのだから、お手本なんかいらない、自分の字で書いてみたいという方がいらっしゃいます。目的は「私じゃないものを体現すること」にあります。お手本をひたすら繰り返し模写することに、写経の意味が出てくるのです。

書道もそうです。先生や手本の影響を受けながら、上達してゆく。いくら達筆でも「私の字」なんてものは、そもそもないに等しい。いい字は「私の字」じゃないんです。「これが私の書」だと思って書く人は、功徳が足りない証拠なのだそうです。

 罪を犯した人が逮捕・勾留されると、写経を始めることが多いと聞きます。入院をきっかけに、写経を始めてみるというのも、よくあるケースです。何か大きな出来事があって、今までの自分を捨てて新しく生まれ変わりたいという人に、「私を捨てられる」写経が、その入り口となるからでしょう。



 脳にいい効果があるそうです。さらに毛筆を使うことの効果も大きいと、私は考えます。筆と墨で綴る作業は、技術的にも相当ハイレベルです。右左に、上下に筆圧を自在に変えながら、太さ細さをつけ、撥ねや払いもある。文字を書くのにこんなに多彩な動きをするのは、ほかの国の文化ではあまり見られません。つまり、絵を描くときのような美的要素を司る脳が働くのです。そういう意味でいうと、ボールペンや万年筆での写経は、毛筆ほど脳活性効果は得られないでしょう。しかも書いているときには同時に頭の中で唱えてもいますから、音声を認識する脳も活発化します。

写経や読経のとき、必ず正座で行なうでしょう。多くの方が億劫になるこの正座ですが、実は「慈悲の心」を呼び起こす役割があるそうです。正座をすると、自然に腹式呼吸になり、下腹部が鍛えられます。そうすると副交感神経が優位になり、右脳の働きがよくなる。右脳優位になるということは、愛や、いたわりなどの感性も養われるそうです。

 「腹で分かる」という言葉がありますね。何も言わなくても、あうんの呼吸で理解するという意味ですが、日々、意識を腹に置くことでその人の受容力が大きくなり、寛大にもなれるということでしょう。



毎月1日と16日
午前9時ごろから13時ごろまで

奈良県生駒市  宝山寺 写経会